『ドローン男の思惑』

 彼が目覚めてすぐテレビをつけると、自分の起こした事件が予想以上に大きく取り上げられていることに驚嘆する。

  昼過ぎのニュースは鹿児島市役所上空からの空撮で中継されていた。

『鹿児島市役所屋上にドローン侵入 文章も発見』

 大きくテロップが表示され、コメンテーター達が各々の討議を展開している。 首相官邸にドローンが侵入したのも記憶に新しい出来事で、どの放送局も同じ話題で持ちきりであった。

 コメンテーター達は首相官邸で起きた事件の模倣犯だという者やドローンに添えられた文章から単なる愉快犯という見方をするものが多い。

 彼がドローンに添えた文章というのは『この国を変える』と書いた便箋であり、過激派とも思想派とも形容できず、およそ理解しがたい物であった。

「ここまで見事、屋上に乗るとはなあ」彼はつぶやく。というのも彼にとって屋外での操作は初めてで、市役所の構内であればどこでも構わないと考えていたのだ。

 それにしても、あいつは気づいてくれるだろうか。彼は思った。

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