『都知事志向者の憂鬱』 | |
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約二カ月間続く、大学の夏季休暇。 その期間、怠惰の極みを尽くす者や、ひと夏の恋に胸を焦がす者、海外に長期滞在する者など多種多様で、過ぎてみれば誰もが華やかな休暇だったと感じるであろう。 しかし隼人にとってのそれは憂鬱で埋め尽くされていた。 憂鬱の種とは、川内原発の再稼働である。 彼は信じていたのだ、自らの反対活動が実を結び、再稼働を止めることができる、この国を変えることができるのだと。 自分自身、否、人間の本来秘めうる可能性を信じていたのだ。そして何より、鹿児島の力を信じていた。 その自信を失うほど、再稼働の衝撃は大きかった。 しかしまだ、彼の気力は残っていた。 「これで終わりませんよ」 古びたアパートの自室。積み上げられた火山灰の詰まった瓶を眺めて呟いた。 まだ、力は残っている。たとえ部屋に有り余る火山灰の数とは比例していなくとも、まだ残っている。 一人でも多くの人々を救うことはできる。火山灰を見つめ、そう思い直した。 |
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